マイホームを購入する際は、住宅ローンを組むのが一般的です。
住宅ローンを組むには担保が必要となりますが、購入する不動産以外にも担保として抵当権を設定することは可能です。
本記事では、不動産購入における共同抵当権とはなにか、共同抵当権を設定するメリット・デメリットを解説します。
共同抵当権とは?複数の不動産をまとめて担保にする仕組み
マイホームの購入を検討する際「抵当権」を耳にしたことがある方は多いと思います。
抵当権とは、住宅ローンなどの融資を受ける際に、債権者(主に銀行)が返済を確保するために不動産を担保に設定する権利のことです。
そして、抵当権の一種として「共同抵当権」というものがあります。
今回は、複数の不動産をまとめて担保にする「共同抵当権」について解説します。
共同抵当権とは
共同抵当権とは、ひとつの債権(住宅ローンなど)に対して、複数の不動産を担保として設定する抵当権のことです。
たとえば、土地と建物が別々の不動産として登記されている場合や、自宅のほかに別の土地や建物を持っていて、融資を受ける際にそれらを合わせて担保にするケースなどが挙げられます。
通常の抵当権(単独抵当権)の場合、返済が滞ったときは設定されている単独の不動産を差し押さえ、競売などによって債権の回収が図られます。
一方、共同抵当権では複数の不動産が対象となるため、返済できなくなった場合、すべての不動産にわたって債権者が競売手続きなどをおこなうことができる点が特徴です。
共同抵当権が利用されるケース
共同抵当権が利用されるケースは、以下の3つです。
●担保力の不足を補う場合
●土地と建物が別々の不動産として登記されている場合
●親族名義の不動産を含める場合
購入対象の不動産だけでは担保価値が不十分な場合に、所有している別の不動産を含めて担保に設定し、ローンを受けやすくするために利用されます。
また、土地と建物を一体としてマイホームを購入する際、土地・建物がそれぞれ独立した不動産として登記されているため、共同抵当権を設定することがあります。
親や兄弟が所有する不動産を担保にくわえて住宅ローンを組むこともあり、その際に共同抵当権が設定されることも多いです。
ただし、上記の場合は所有者全員の同意が必要です。
共同担保として活用できる物件
共同担保として利用するには、自宅や所有する収益物件など、既にある不動産が対象ですが、すべての不動産が共同担保に適しているわけではありません。
共同担保として利用できるかどうかは、その不動産の「残債」と「所在エリア」が決め手となります。
残債については、自宅や他の物件に残っているローンの金額が、共同担保としての利用可能性に影響します。
具体的には、ローン残高が半額以下、またはローンが完済されている物件は、共同担保として使いやすいです。
たとえば、5,000万円の評価がされる物件でも、ローンが半分残っている場合は、完済している同額の物件に比べて評価が大きく下がることがあります。
エリアについては、物件がある地域も共同担保としての利用可能性に大きく関わります。
地域に密着した信用金庫などは、その営業範囲内の物件のみを共同担保として受け入れることが一般的です。
また、人口が少ない地域や銀行支店がない場所など、一部の地域では共同担保として認められないこともあります。
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不動産購入時に共同抵当権を設定するメリットとは?
共同抵当権は、単独の不動産だけでは融資額や条件面において不安な場合に、複数の不動産を合わせて担保にすることで融資を受けやすくする仕組みです。
以下では、共同抵当権を利用する主なメリットについて解説します。
メリット①融資額の引き上げ
共同抵当権では、複数の不動産をあわせて担保価値を算出するため、単独の不動産に比べて担保評価額が高くなることがあります。
結果として、金融機関が貸出可能な金額が増加し、高額な融資を受けられる可能性が高くなる点がメリットです。
メリット②融資条件が優遇される場合がある
担保価値が高まることで金融機関にとってリスクが減るため、金利や返済条件などで優遇を受けやすい場合があります。
金利が低く抑えられたり、借り入れ期間を長めに設定できたりなど、返済負担が軽減される可能性があります。
メリット③資金計画の柔軟性が高まる
単独の不動産を担保にした場合よりも、追加で担保にできる不動産があることで融資枠に余裕が生まれ、資金計画を柔軟に組むことが可能な点もメリットです。
購入だけでなく、リフォーム費用や諸費用なども含めて資金調達しやすくなるケースもあります。
メリット④土地・建物が別々の場合でも一体として評価される
土地と建物が別々の不動産として登記されているケースでは、共同抵当権を設定すると土地と建物を合わせて一体として評価してもらえます。
単独の土地や建物だけでは評価額が不足する場合でも、担保としての価値を十分に見込める可能性があるでしょう。
ただし、返済が滞った場合は複数の不動産が競売の対象となり得るため、リスク管理が重要です。
住宅ローンを検討する際は、金融機関や専門家と相談しながら、メリットとリスクをしっかりと把握することをおすすめします。
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不動産購入時に共同抵当権を設定するデメリットとは?
共同抵当権には、担保価値を高めて融資を受けやすくするなどのメリットがありますが、その反面、注意しておきたいデメリットも存在します。
利用を検討する際にはリスクや手続き上の負担などを含め、総合的に判断することが大切です。
主なデメリットは、以下の4つです。
デメリット①返済が滞ると複数の不動産が競売の対象となる
通常の抵当権は単独の不動産のみが競売の対象となりますが、共同抵当権の場合は担保に設定した複数の不動産すべてが競売の対象となります。
返済が滞ってしまった場合、たとえ1つの物件だけで債務額をカバーできるとしても、金融機関の判断でほかの不動産まで失う可能性がある点は大きなリスクといえます。
デメリット②担保不動産を処分しにくくなる
共同抵当権を設定している不動産を売却や譲渡などで処分したいと考えた場合、抵当権を抹消したり、別の不動産を追加担保として差し入れたりするなどの手続きが必要です。
また、共同抵当権が設定されていること自体が買主にとって懸念材料となり、買い手が見つかりにくくなるリスクも考えられます。
処分時の手間や費用が増える点もデメリットの1つです。
デメリット③共有者や他の所有者とのトラブルが生じやすい
1つのローンに対して複数の所有者の不動産を担保に含める場合、共有不動産(親族や複数人の共有など)が含まれることがあります。
この場合、全員の合意を得る必要があるだけでなく、返済が滞った際には他の所有者に損害が及ぶ可能性があるため、人間関係のトラブルへ発展してしまうリスクも考慮しなければなりません。
デメリット④担保力の低下や価値変動の影響を受けやすい
共同抵当権は複数の不動産の価値を合算することで融資を受けていますが、不動産価値は時期や地域によって大きく変動します。
万が一、担保として設定した不動産の評価額が下がると、金融機関から追加担保を求められたり、返済計画に影響が出たりする可能性があります。
マイホーム購入時に共同抵当権を検討する場合は、事前に十分な情報収集と専門家への相談をおこない、慎重に判断しましょう。
メリットとデメリットをしっかりと把握し、専門家に相談しながら最適な資金計画を立てることが大切です。
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まとめ
共同抵当権とは、1つのローンに対して、複数の不動産を担保として抵当権を設定することを指します。
共同抵当権のメリットは、融資額の引き上げや融資条件の優遇、資金計画の柔軟性、土地・建物が別々の場合でも一体として評価される点です。
一方でデメリットは、返済が滞ると複数の不動産が競売の対象となることや担保不動産を処分しにくくなる点、共有者や他の所有者とのトラブルが生じやすい点などです。