使っていない土地に新たに建物を建てる際は、造成工事が必要となることがあります。
この記事では、土地の造成とはなにか、造成工事の種類や土地の造成工事を進める流れについて解説します。
使っていない土地を所有している方は、ぜひ参考になさってください。
土地の造成とは?
造成とは、土地を有効活用するために目的や用途に合わせて形状や区画を変更し、平坦に整える工事のことです。
たとえば、樹々を伐採したり、傾斜地に土を盛って平らにしたりなど、住宅や商業施設などの建築に適した状態にします。
造成工事が必要となる土地
造成工事が必要となるケースは、以下のとおりです。
●傾斜や高低差がある
●地盤が軟弱である
●土地の形が変形している
●広い土地を道路や宅地に分割したい
山林や丘など、傾斜している土地は、そのままの状態だと建物を建てることができません。
そのため、傾斜している部分に盛土や切土をおこない、土地を平坦な状態に工事します。
盛土とは、傾斜地の下の部分に土を追加して地面を高くし、平らにする作業のことです。
田んぼなどの道路よりも低い土地を高くしたい場合も盛土をおこなって平坦にします。
切土とは、傾斜地の上の部分の土を削り取って地面を低くし、平坦にする作業のことです。
切土をおこなったことにより隣地との境目に高低差が発生した場合は、土砂崩れのリスクを防ぐために擁壁も作ります。
擁壁とは、鉄筋コンクリートやコンクリートブロックなどで斜面の土を留める壁状の構造物です。
地盤が軟弱な土地は、そのままの状態で建物を建てると、地震が発生した際に液状化や地盤沈下の恐れがあるため、地盤改良の工事が必要となります。
とくに、田んぼや畑だった土地は、地盤が軟弱なケースが多いです。
三角形やひし形など、不規則な形の土地は区画がしにくいため、四角形に整形すると効率的な土地利用を可能にします。
広い土地を道路や宅地に分割する場合も、造成工事が必要です。
造成工事の費用
造成工事の費用は、目的や土地の状況によって大きく異なります。
そのため、国税庁が公表する「宅地造成費の金額表」を利用して、費用の相場を把握することが一般的です。
宅地造成費の金額表は、本来は相続税の評価額を調べる際に利用する表です。
国税庁のホームページより路線価図・評価倍率表にアクセスすると、都道府県ごとに年度別の金額表を確認できます。
造成工事の期間
造成工事の期間は、工事の内容や土地の状態によって異なります。
簡易的な整地作業であれば1週間~2週間ほど、大規模な造成工事では1~2か月ほどが一般的です。
梅雨や積雪のシーズンは工事の遅れが予想されるため、避けることを推奨します。
土地の造成工事の種類とは?
土地を造成するときは、具体的にどのような工事をおこなうのかも気になりますよね。
造成工事の種類は、以下のとおりです。
整地
整地とは、地面の凹凸を平坦化する作業です。
古い建物がある場合は、解体後に整地をおこないます。
コンクリートガラや石、草などがあれば取り除き、重機を用いて土地の表面を均一にします。
土地に建物を建築する際は、安定性を保つため地面の平坦化はとても大切です。
土地の用途に応じて、仕上げに砂利の敷設やコンクリートの流し込みをおこなうことがあります。
砂利造成をする場合は、適切な大きさの砂利を敷き詰め、転圧して固めます。
砂利造成は、水はけを改善し、防犯性が高まる点がメリットです。
駐車場など、重い荷重に耐える必要がある土地の造成の場合は、コンクリート・アスファルト舗装がおすすめです。
コンクリートは耐久性が高く、アスファルトは設置コストが低い特徴があります。
利用目的や予算に応じて最適な舗装材を選ぶことが大切です。
伐採・防草
山林や雑草地の場合は、土地上の不要な樹木や草花を取り除く伐採や伐根が必要です。
伐採された木材は適切に廃棄される必要があり、場合によっては廃棄費用が発生します。
なお、敷地内の樹々をすべて切り倒すわけではなく、土地の用途に応じて、邪魔になる樹々や草花を取り除きます。
そのため、景観を考慮したり、自然の特性を活かしたりするために、適度な緑を残すことも可能です。
仕上げに、除草剤をまき、防草シートなどを用いて雑草の繁茂を防ぐこともあります。
地盤改良
土地に建物を建築する際は、地盤調査で地盤改良の必要性を調べましょう。
建築物の安全を確保するためには、弱いまたは弱化している地盤を強化する必要があります。
たとえば、田んぼや畑、長い間放置している土地は、地盤が弱っている可能性があります。
地盤改良の工事をせずに軟弱地盤の土地のうえに建物を建てると、地震や水害などの災害時に、地盤沈下や液状化現象を起こす可能性がありとても危険です。
地盤改良は、表層部分の土にセメント系の固化材を混ぜて地盤を固める「表層改良工法」と、建物を支える「柱状改良工法」「鋼管杭工法」などの方法があります。
どの工法を用いるかは、地盤の状態や建てる建物の規模によって異なります。
土留め(土止)
土留め(土止)とは、盛土によって高さを増した土地の崩壊を防ぐために、斜面に強固な壁を作ることです。
土地のうえに建物を建築する際は、地盤調査の結果に基づき、土留めの必要性や規模を決定します。
土留めにはさまざまな材料(板、ブロック、コンクリート、石など)がありますが、土地の用途や予算、必要な強度に応じて最適なものを選びましょう。
土地の造成工事を進める流れとは?
では実際に、どのような流れで土地の造成工事を進めれば良いのでしょうか。
手続きの流れは、以下のとおりです。
STEP①不動産会社への相談
不動産会社は、造成に関する計画から固定資産税などの税金、都市計画法や宅地造成等などの法律関係まで幅広い知識を提供します。
そのため、造成工事前に経験豊富で地域の法規制や市場状況を理解している不動産会社に相談するのが安心です。
STEP②造成工事の許可申請をおこなう
土地の所在地に応じて、自治体に土地の造成工事をおこなうことを申請します。
造成工事が規制されている区域の場合は、その地域の知事や市長から許可を得る必要があります。
造成工事を請け負う会社や土地活用の専門会社が所有者の代わりに申請するのが一般的です。
STEP③地鎮祭
地鎮祭は、土地のうえに建物を建築するにあたって、土地の神様に敬意を表し、工事の安全と成功を祈願する日本の伝統的な儀式です。
一般的に、造成工事の開始前におこないます。
STEP④地盤調査
次に、地盤調査で土地の地盤の状態を把握し、必要な改良工事の計画を立てる流れです。
地盤がどのくらいの重さに耐えられるかを調べます。
STEP⑤機材の搬入
造成工事に必要な機材や材料を搬入します。
大型機材の場合は、道路の幅や周辺環境の確認が必要です。
なお、造成工事は騒音が発生することもあるため、事前に近隣住民に説明をおこない、理解を得ておきましょう。
STEP⑥伐採、除根、掘削、残土処分
土地を整備するために、不要な樹木や根を取り除き、地盤を適切な形状に整えます。
掘削した土の運び出しと、必要に応じて新たな土を追加します。
切土で発生した残土は適切に処分が必要です。
残土は埋め立てや埋め戻し、宅地の造成などに用いられることもあります。
STEP⑦転圧作業
ローラーなどの重機で土地を地ならし・転圧して踏み固め、平坦化します。
転圧作業によって地盤が強化され、将来の建築物のための安定した基盤を作るのです。
STEP⑧工事の完了
造成工事が完了した後、必要に応じて舗装工事をおこないます。
前述のとおり、造成工事にかかる期間は短くて1週間~2週間ほど、大規模な場合は1~2か月ほどです。
手続きの流れや要する期間は、土地活用の目的や条件などによっても異なります。
まとめ
造成とは、土地を活用するために目的や用途に合わせて形状や区画を変更し、きれいに整える工事のことです。
造成工事の種類は、主に整地、伐採・防草、地盤改良、土止の4つです。
手続きの流れは、不動産会社への相談から工事完了まで8段階あり、短くて1~2週間ほどかかります。