近年は空き家や空き店舗が増加しているため、既存の建物を購入しリノベーションして、別の施設にするケースが増えています。
しかし、建物の利用用途を変更する場合「用途変更」手続きが発生し、さらに建物の規模や変更する用途によっては「確認申請」も必須です。
この記事では、そもそも用途変更と確認申請とは何かと、手続き方法や流れについてご紹介します。
用途変更とは
用途変更とは、すでにある建物におけるもともとの用途から、異なる用途に変更する手続きを指します。
たとえば、住居から飲食店や旅館に変更する場合や、工場から物販店舗へ変更する場合も対象です。
用途を変更する手続きとは書類を提出するだけでなく、自治体や消防・保健所などへの確認手続きや、新しい用途に対応する工事も含まれます。
用途変更の手続きが必要な理由
建物は用途によって安全の基準が変わります。
変わった基準に適した安全基準や法令を遵守する必要があるので、変更した際には安全基準を満たしているか自治体や消防などに確認依頼し、承認を得なければなりません。
必要に応じて、設備の設置や改修工事をしましょう。
用途変更で建物を有効活用できる
用途を変更すれば、使用していない建物やフロアの有効活用が可能です。
活用すれば新たな収入源を得られる可能性もあります。
また、建築物が老朽化して現在の用途に適さなくなった場合も、リノベーションして新たな用途へ変更すれば活用の道が開けます。
たとえば古い古民家を、古さを活かした一棟貸しの旅館にすれば、外国人旅行客が宿泊するかもしれません。
空き家の増えた共同住宅の部屋を、店を営業したい個人に貸し出し、飲食店や物販店などに用途を変更するのも良いでしょう。
他にも、建物が公共施設としての需要を持っている場合なら、用途を変更して自治体に渡して文化施設に転用してもらう選択肢もあります。
たとえば古い工場を、子ども向けの室内遊び場にするケースもあるので、大きな建築物を所有しているが利用していない方は検討してみましょう。
違反建築物とは
建築基準法や都市計画法などに違反している建築物を示します。
建築後に増改築や用途変更を行なった結果、違法となる場合もあるので、注意が必要です。
違反がある場合は、それに対する対応措置をおこなう必要があります。
そのため必ず着工前に、建築士などの専門家に調査や設計を依頼しましょう。
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用途変更で確認申請が必要・不要なケースとは
用途変更する場合、以下の2つの条件両方にあてはまるなら、確認申請が必要となります。
1つ目が、特殊建築物へ用途を変更する場合(ただし類似の用途への変更の場合は除く)です。
2つ目が、用途変更したい床面積の合計が200㎡を超える場合です。
たとえば、1フロア160㎡の2階建て事務所を飲食店に変更する場合、1階のみなら確認申請が不要になります。
不要な理由はこの事例の場合、非特殊建築物から特殊建築物へ用途の変更にあたりますが、変更する床面積が200㎡以下であるためです。
しかし、1・2階ともに変更する場合は、合計で320㎡となるので確認申請が必要になります。
他にも物販を営む店から飲食店に変更する場合は、類似用途に該当しないので、確認申請が必要です。
確認申請が不要なケース
2019年6月に建築基準法が改正され、200㎡以下の用途を変更する場合は、確認申請の手続きが不要になりました。
よって、たとえば住宅から旅館やデイサービス施設などに変更する場合でも、床面積の合算が200㎡以下なら、手続きが必要ありません。
また類似用途の建築物に、用途を変更する場合も不要です。
法律で定められた類似用途は、全部で11種類です。
主に以下のような類似用途があります。
●劇場映画館、演芸場
●診療所(患者の収容施設があるものに限る) 、児童福祉施設等
●ホテル、旅館
●博物館、美術館、図書館
●体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
たとえば、劇場を映画館にする場合は、類似用途への変更なので手続き不要です。
下宿を寄宿舎や、カフェをバーに変更する場合も類似用途への変更と見なされます。
他にも、特殊建築物を非特殊建築物に変更する場合も不要です。
たとえば、倉庫を事務所や、下宿を専用住宅にする場合が該当します。
さらに他にも、非特殊建築物から非特殊建築物への変更も不要です。
非特殊建築物とは、専用住宅・長屋・事務所・銀行・市役所・神社・寺院などを指します。
たとえば、専用住宅から事務所に変更する場合は確認申請が不要なケースに該当します。
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用途変更の確認申請の流れ
確認申請が必要な場合は、提出に必要な資料や手続きを確認して、速やかに申請を進めましょう。
用途変更における確認申請の流れは以下のとおりです。
設計と調査
希望の用途に変更するにはどのような設計が必要か、建築基準法などの法的要件を遵守する必要があるか調査する必要があります。
調査は、建築事務所や建築士などの専門家に依頼しましょう。
この時に、用途変更に関する詳細な計画書類や図面作成も合わせて依頼すると良いでしょう。
確認申請書の作成・提出
工事を着工する前に、その計画が建築基準法などの法令等(建築基準関係規定)に適合しているかの確認が必須です。
そのために申請書類である「確認申請書」を、都道府県または市区町村の建築主事に提出します。
その際に、仕様書や工法についての認定書・設計図・付近見取り図などの設計図面の提出を求められるので、建築事務所や建築士に事前に作ってもらいましょう。
審査と許可取得
提出された申請書類を元に、所轄の建築行政部門で審査されます。
審査過程で、計画に関する指摘や修正が求められる場合もあるでしょう。
指摘があれば、建築事務所や建築士と連携して対応策を検討し、修正をおこないます。
審査を経て申請が承認されれば、「確認済証」が交付されます。
確認済証の交付があれば、用途申請を許可されたと判断されるので、建築工事に着工可能です。
工事の実施と完了報告
許可が下りたら、計画にしたがって必要な工事を進めましょう。
木造3階建てや一定以上の規模を持つ鉄骨造、および鉄筋コンクリート造の建物の場合は、中間検査が実施されます。
工事が完了したら、自治体に完了検査を依頼します。
完了検査後、完成した建築物が建築基準法に適合している場合は、建築主事により建築主に「検査済証」が交付されるのが主な流れです。
検査済証の交付を受けるまでは、建築物の使用ができません。
検査済証は、今後建物の売却やリフォームなどの際に必要になる可能性もあるので、大切に保管しておきましょう。
また飲食店や宿泊所などの特殊建築物として用途変更を実施した場合、消防署や保健所の検査を受けて、対応する構造や設備があるか確認してもらう必要があります。
たとえばゲストハウスなどの簡易宿泊所の場合、自動火災報知設備・誘導灯・消火器の設置が義務付けられるので、設置されているか管轄の消防署がチェックします。
自宅の一部をカフェにする場合も、住居部分とカフェスペースが仕切られているか、必要な水回りが揃っているかなどを保健所にチェックしてもらわなければなりません。
確認申請にかかる費用は工事の規模によりますが、数十万円〜数百万円程度が多いです。
以上が、一般的な確認申請の流れになります。
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まとめ
用途変更は、既存の建物の有効活用をするために必要不可欠です。
変更をおこなう際、変更する用途内容や敷地面積によっては、確認申請も必須になります。
時間に余裕を持って建築士などの専門家に依頼し、調査・設計・工事などの用途変更に関する手続きを進めていきましょう。