高齢化が進むとともに、コロナの影響などにより職を失った方もおり、生活保護の受給を検討している方もいらっしゃるでしょう。
収入が減ったため所有する不動産を売却し、それでも生活が苦しくて保護を受けるケースもあります。
この記事では、生活保護の受給要件のほか不動産を所有していても受給できるケースなどをご説明するので、受給を希望している方はお役立てください。
生活保護の受給要件
失職や病気、ケガなどの事情により生活が立ちゆかなくなった場合には、自分の身を守るために生活保護の受給を検討する必要があるでしょう。
ここでは、生活保護の概要や受給要件について解説します。
生活保護とは
日本国憲法では、すべての国民に対し、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しています。
生活保護とは、この権利を保障するための公的支援の1つで、法に基づき最低限の生活費を国が支給するものです。
ただし誰もが簡単に受給できるわけではなく、次の4つの要件を満たす方に限られます。
収入の要件
収入が少なく、最低限度の生活を送れない方には、国が定めた最低生活費から収入を差し引いた金額が支給されます。
最低生活費は「親子4人で県庁所在地に住んでいる場合は22万円程度」のように、住所地や家族構成によって金額が異なるので注意が必要です。
国が定めた最低生活費以上の収入がある場合は、生活保護の対象にはなりません。
資産活用の要件
生活保護の受給は、生活が困窮していることが前提になります。
このため、預貯金を生活費に充てたうえで、生活に利用されていない土地や家屋、絵画、貴金属、自動車などの資産を売却して生活費に充てるのが基本的な考え方です。
能力活用の要件
働ける能力があるのに仕事をしない方は、最低限度の生活を送るための最低生活費を稼ぐ能力があるにも関わらず自ら放棄していると判断されます。
世帯の中で1人でも働ける能力を持つ方がいる場合には、能力活用の要件を欠いているとみなされ保護の対象にはならないため注意が必要です。
保護が必要と考えられるのは、高齢者や病気などにより働けない場合に限られます。
その他の要件
生活保護法においては、民法で定められている扶養義務の考え方が適用されます。
これに伴い、両親や成人している子、兄弟姉妹、親戚などは扶助義務者となり、保護申請者は扶助義務者から援助を受けるよう努めなければなりません。
生活保護の手続きは福祉事務所に申請しますが、福祉事務所では、これらの親族に対しつき合いの有無に関わらず申請者の生活援助ができないか照会します。
この照会に対し、扶助義務者から仕送りなどを受けられる場合には、その仕送り分は収入と算定され保護費から減額される仕組みです。
また雇用保険や健康保険、各種年金、児童扶養手当、高齢福祉手当、身体障がい者福祉手当など、利用できる制度はすべて利用する必要があります。
▼この記事も読まれています
不動産売却時に行われる物件調査ではなにを調べる?調査項目や流れとは
生活保護を受給するためには所有する不動産の売却が必要?
受給要件に資産活用があるとおり、生活保護は、所有する資産を活用しても必要最低限の生活費を賄えない場合に限り受給できる制度です。
したがって、所有する不動産は売却するのが前提ですが、すべてが売却対象になるわけではないので注意しましょう。
売却が必要な不動産
生活保護を受給するにあたり、売却しなくてはならない不動産は下記のとおりです。
居住していない不動産
最低限度の生活を営むために必要がないと判断される不動産は、売却が必要です。
住まいとして利用していない物件は、所有していなくても困らないと判断されるでしょう。
たとえば、相続によって取得した空き家などは、売却対象になる可能性が高くなります。
資産価値が著しく高い不動産
居住中の不動産であっても、都心の一等地に立地している場合や、家族の人数に対して大きすぎる場合は売却を求められるでしょう。
地域によって異なりますが、資産価値が著しく高いと判断される一般的な目安は2,000万円です。
ローンが残っている不動産
住宅ローンが残っている不動産は、自宅であっても所有できないため、売却しなければなりません。
なぜなら、生活保護費をローンの返済に充てる可能性があり、自力でローンを返済している方との間に不公平が生じるためです。
ただし、ローン残債が少なく返済が短期間で終わる場合は、所有を許可される可能性もあるためこの限りではありません。
所有可能な不動産
このように、不動産を所有していると高い確率で売却を指示されます。
しかし、以下のような不動産は所有が認められる可能性もあります。
●ローン完済済みで資産価値が高くない自宅
●高齢者世帯の自宅
●事業用不動産
高齢者世帯とは、65歳以上の方のみ、もしくは65歳以上の方と18歳未満の方で暮らす世帯のことです。
高齢者世帯の方が生活保護を受給しようとする場合、売却ではなくリバースモーゲージの利用を指導されます。
リバースモーゲージとは不動産を担保に融資をおこなうもので、居住者が亡くなったあとなどに不動産を売却して貸付金を回収する方法です。
引っ越しが難しい高齢者世帯でも、自宅に住み続けながら生活資金を受け取れる点が大きな特徴です。
事業用不動産とは、利益を得るために所有している賃貸物件や田畑などを指します。
生活を立て直すための収入が得られなくなっては困るため、このような不動産は所有し続けられるのが一般的です。
賃貸物件を所有している場合、売却ではなく家賃の値上げを指導される可能性があります。
ただし、事業用不動産であっても収入をほとんど得られていない場合は、売却しなくてはならないかもしれません。
▼この記事も読まれています
数次相続とは?注意点や不動産を相続する際の手続き方法も解説!
生活保護を受給するために売却した不動産に住み続ける方法とは
病気などで一時的に生活保護を受給するものの、生活を立て直すために、自宅に住み続けることを希望する方は多いでしょう。
そのような場合は、「リースバック」の利用がおすすめです。
最後に、不動産売却を指導された場合に備え、生活保護受給中も自宅に住み続けることができる「リースバック」をご紹介します。
リースバックとは
リースバックとは、売却した自宅を買主から賃貸物件として借りて住み続ける方法のことです。
自宅の売却代金を得られるため住宅ローンや借金の返済が可能で、賃貸物件として住み続けられるので引っ越しの必要がありません。
所有権は不動産会社へ移転しますが、購入資金を貯めて将来的に買い戻せる可能性もあります。
リースバック後の生活保護における注意点
リースバックに伴う不動産売却によって多額の現金を保有する場合は、生活保護の受給が難しくなります。
しかし、売却代金をローンなどの返済に充てて手元に残さないのであれば、問題ないでしょう。
また、生活保護受給中に賃貸物件に住む場合は、地域ごとに賃料の上限額が定められています。
そのため、リースバック後の賃料が上限額を上回ると、引っ越すよう指導されるかもしれません。
リースバック後の賃料は、売却価格を基に決まります。
そこで、売却価格を安くする、賃料を限度内に収められないか貸主に相談するなどの対策を講じましょう。
▼この記事も読まれています
建設協力金による土地活用方法とは?メリット・デメリットを解説
まとめ
生活保護を受給するには、収入や資産活用、能力活用などの要件を加味したうえで判断されます。
不動産に関しては、居住していなかったり資産価値が高かったり、ローンが残っていたりする場合は売却が必要です。
もし、住んでいる物件に売却後も住み続けたい場合は、リースバックを検討しましょう。