住宅は自力で建てたとしても、土地を借りている状態では借地権が発生しています。
借地にある住宅を相続したときは、相続税の計算に借地権割合が大きな影響を与えるでしょう。
そこで今回は、借地権割合とは何か、借地権割合を用いた相続税評価額の計算方法や借地権割合の調べ方についてご紹介します。
借地権割合とは
借地に建っている住宅を相続すると、相続税の計算に借地権割合を使用する必要があります。
そもそも借地権とは、住宅を建てるために他者から土地を借りる権利のことです。
他者から借りている土地には、借りている方が持っている借地権ともともとの地主が持っている底地権の2種類の権利があります。
土地を借りたときの借地権には価格があり、相続することもできる権利のひとつです。
そのため、借地権がある土地については相続税を計算するときに借地権割合が重要になります。
借地権割合は土地の価値に対する借地権の価値の割合
借地権割合とは、住宅が建っている土地の更地評価額に対する借地権評価額の割合です。
土地の価値のうち、借地権を有する者に帰属する経済的利益を示す指標とされています。
土地の設定価格の何割が借地権の価値に相当するかを示す数値です。
借地権割合は一定ではなく、国税局が各地域ごとに割合を定めています。
借地権は売却可能ですが、地主の許可が必要などの実務上の制約があるため、主に相続税の計算に用いられることが多いです。
借地権割合の例
借地権割合は、国税局によって地域ごとに定められており、すべての土地で一定ではありません。
基本的には、10%刻みで30~90%の範囲内で決められています。
主要駅周辺や繁華街近くなどは借地権割合が高く、逆に利用価値が低い土地では借地権割合も低くなります。
たとえば、東京駅周辺や中央区銀座などでは借地権割合が90%に設定されていることが多い傾向にあります。
このような都心部の商業地では80~90%、住宅地でも60~70%程度です。
そのため、都心部の利便性が高い土地の借地権を相続すると、土地価格に対する借地権割合が大きくなります。
結果として、借地権を相続する際に支払う相続税も高くなるため、注意が必要です。
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借地権割合による相続税評価額の計算方法
借地権にはさまざまな種類があり、借地権割合をもとにした相続税評価額なども種類によって異なります。
相続税評価額に影響する借地権の種類とは、普通借地権、定期借地権、一時使用目的の借地権の3種類です。
普通借地権
普通借地権とは、一般的に「借地権」と呼ばれる借地権のことです。
他者の土地を借り、住居や事業用の建物を建てて使用する権利を指します。
契約期間の定めはありますが、満了時に更新が可能で、書面がなくても契約を続けることができるタイプです。
普通借地権は、土地の自用地評価額がわかっていれば簡単に計算できます。
自用地評価額に借地権割合を掛けることで、そのまま借地権の評価額が求められます。
定期借地権
定期借地権とは、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3つの借地権をまとめたものです。
一般定期借地権は、契約の更新や建物の存続による契約期間の延長がない代わりに、50年以上土地を使用できる権利を指します。
事業用定期借地権と建物譲渡特約付借地権は、一般定期借地権とは条件が異なりますが、契約の更新がない点は共通しています。
これらの借地権は、相続税を計算する際には「定期借地権」として同様に扱われ、相続税評価額の計算方法も同じです。
一般定期借地権では、自用地評価額に1から底地割合を引いた数値を掛けて計算します。
さらに、そこに一般定期借地権の残存期間に応じた基準年利率による複利年金現価率を、設定期間に応じた基準年利率による複利年金現価率で割ったものを掛ける必要があります。
そのため、一般定期借地権の計算には専門知識が必要で、計算が複雑な分、税務署のチェックも厳しくなります。
一時使用目的の借地権
一時使用目的の借地権とは、長期間の運用ではなく、建物を建てるために一時的に土地を借りる場合の借地権です。
建設現場で一時的に使用する工事事業所用の建物を建築するケースなどで発生します。
一時使用目的の借地権は、地上権に準ずる権利として取り扱われる場合と、それ以外のケースに分かれるのが特徴です。
また、一時使用目的の借地権が適用される場合、対象の土地は雑種地として計算します。
一時使用目的の借地権が地上権に準ずると判断される場合、雑種地の自用地評価額に法定地上権割合と借地権割合のうち、低い方の割合を掛けて計算します。
それ以外の場合は、雑種地の自用地としての価格に法定地上権割合の半分を掛けて計算します。
法定地上権割合は、残存期間により5~90%の範囲で変動するため、注意が必要です。
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借地権割合の調べ方
借地権割合は国税局によって地域ごとに決められているため、相続税の計算をするときはこの割合を調べる必要があります。
借地権割合の調べ方とは、国税庁が公表している図や表をインターネットなどからチェックすることです。
その土地がどこにあるのかによって、路線価図を用いる方法と倍率表を用いる方法に分けられます。
路線価図を確認する方法
該当の土地が路線価地域にある場合、路線価図を用いて借地権割合を調べることができます。
路線価地域とは、道路ごとに評価額の基準が決まっている地域のことです。
路線価図には土地ごとにAからGまでのアルファベットが振られており、アルファベットによって適用される借地権割合が異なります。
Aが最も割合が高く90%、Bが80%、Cが70%、Dが60%、Eが50%、Fが40%、Gが30%と設定されています。
Aは都心部の主要駅周辺などの一等地、Bは都市の主要駅周辺、Gは農業地域など車移動が主となる地域など、利便性や需要によって借地権割合は異なります。
なお、借地権の取引慣行がない地域については、借地権割合は記載されておらず、0%として扱われます。
路線価図は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」のページで確認でき、路線価の数字の後ろにアルファベットが表記されています。
倍率地域での借地権割合の調べ方
該当の土地が路線価地域でなく倍率地域にある場合、調べ方が異なります。
倍率地域とは、評価額の計算を路線価ではなく、固定資産税評価額に地域ごとの倍率を掛けて算出する地域のことです。
そのあと、計算された自用地評価額に地域ごとの借地権割合を掛けて借地権の評価額を求めます。
倍率地域ごとの具体的な倍率や借地権割合は、倍率表という書類で確認できます。
路線価地域と倍率地域は重ならないため、倍率表には倍率と借地権割合が記載されているか、路線と記載されているかのいずれかです。
「路線」と記載されている場合、その土地は路線価地域に該当することを示し、路線価図を確認して借地権割合を計算する必要があります。
倍率表も、路線価図と同様に国税庁のホームページで確認可能です。
該当する土地がどちらに分類されるか不明な場合は、まず倍率表を確認し、「路線」と記載されていたら路線価図を確認すると良いでしょう。
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まとめ
借地権割合とは、土地の評価額のうち借地権が占める割合について示した数値です。
国税局によって決められており、利便性が良い土地ほど割合が高い傾向にあります。
借地権割合を調べるときは、国税庁が公表している路線価図あるいは倍率表に書かれたアルファベットや数字を見ると良いです。