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所有者不明土地とは?買いたい場合の手続き方法とリスクを解説

不動産コラム【売買】

所有者不明土地とは?買いたい場合の手続き方法とリスクを解説

所有者がわからない土地でも、適切な手順を踏めば取得できるのをご存じでしょうか?
本来であれば売主と買主が顔合わせをした状態で売買取引をするものの、売主が不在のときはどうすれば良いか迷うケースもあるでしょう。
今回は、所有者がわからない土地を買う前に知っておきたい基本概要と手続きの手順にくわえて、リスクについて解説します。

所有者不明土地とは

所有者不明土地とは

所有者不明土地とは、所有権を持っている方が特定されていない状態もしくは所有者と連絡が取れない状態の土地を意味します。

2023年に法改正された背景

以前までは所有者がわからない土地を買いたい人がいても、所有者や共有者の一部から合意が得られない状態では売買取引ができませんでした。
なぜなら、所有権のある人が売却する意思があるかを判断するのが困難だからです。
高齢化が進む日本ではしだいに所有者不明土地が増加していて、活用できずに放置される土地が増加している現場が問題視されるようになりました。
よって、2023年4月1日に所有者不明の土地でも購入しやすく法改正されたので、以前は諦めていた土地が購入できる可能性が高くなっています。

所在者不明地が増加している原因①住所変更登記の放置

不動産の所有者は、引っ越しをして住民票の住所が変わるたびに法務局で手続きをして登記簿謄本に記載する住所まで変更しなければなりません。
しかし、以前までは住所変更登記が義務化されていなかったので、登記簿謄本をみても古い住所しか記載されておらず所有者と連絡取れない事例が多発しています。
現在は、法改正によって引っ越しから2年以内に住所変更登記が義務化されています。
2026年4月までに本人の了承を得られたケースに限っては、登記官がほかの公的機関から情報を共有してもらい、職権に基づき住所変更できるシステムが導入される予定です。

所在者不明地が増加している原因②相続登記の放置

被相続人から不動産を引き継いだのであれば、名義変更をしなければなりません。
しかし、住所変更登記と同様に相続登記も義務化されていなかったため、相続した土地や建物の所有権を変更せずに放置するケースが多くありました。
これにより登記簿謄本をみてもすでに死亡している方の名前しか記載されておらず、本当の所有者と連絡が取れない事例が多発しています。
2024年4月1日に法改正がおこなわれて、現在は相続が発生しているとわかってから3年以内に相続登記をおこなうように義務付けています。
名義人が亡くなってから年数が経っていると、何代にもわたって相続が発生している可能性が高く、利権者をたどるのが困難です。
法改正によって、所有者のわからない土地でも購入しやすくなっているので、活用できる範囲が広がっています。

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所有者不明土地を買いたい方がやるべき手続き手順

所有者不明土地を買いたい方がやるべき手続き手順

所有者不明の土地を買いたい方は、所有者や共有者の身元を調べて、直接売買取引を交渉しなければなりません。
その手順について解説します。

全部事項証明書を発行して権利関係の調査

まずはじめに全国の法務局で取得できる土地の全部事項証明書を発行して、登記されている所有者もしくは共有者を確認して連絡をとります。
登記されている所有者がすでに亡くなっている場合、戸籍謄本などの情報から現在の所有者を探す作業が必要です。
ただし、戸籍謄本は出生や現在の住所など個人情報が細かく記載されている書類だからこそ、土地を買いたいとの理由だけで入手はできません。
そのため、第三者の所有している土地の所有者を探すためには、土地の所有者や共有者と利害関係のある方の協力が必要不可欠です。
弁護士などの力を借りながら所有者や共有者の利害関係が一致する方が見つかれば、連絡を取り合って、土地を買いたい意思を伝えます。

不在者財産管理人制度の活用

全部事項証明書などで所有者や共有者の身元がわかったら、不在者財産管理人制度を活用して連絡できます。
不在者財産管理人制度とは、従来の住所を去ったあとに戻ってくる見込みがない不在者の財産を、代理で管理できる不在者財産管理人を家庭裁判所に選んでもらう制度です。
不在者財産管理人は、売却を含む不動産管理の決定権を持っています。
ただし、不在者財産管理人はすべての財産を管理する権限を持つため、土地を買いたい方が現れたからといって手続きがスムーズに進むとは限りません。
つまり、所有者や共有者が特定できない状態では、不在者財産管理制度が利用できないので、気を付けましょう。

特定財産管理制度の活用

所有者や共有者が全くわからず、不在者財産管理制度が利用できないときは、特定財産管理制度を活用してみてください。
特定財産管理制度とは、家庭裁判所が特定の不動産等を対象として管理人を選任し、不在者財産管理人制度よりも管理範囲が限定されることで利用しやすいとされる制度です。
この制度を利用すれば、該当する土地や建物について特定財産管理人として認められた場合、共有状態の不動産を含めて自由に売却できるようになり、従来の制度よりも審査を通過しやすくなります。
また、特定財産管理人はすべての財産を管理するわけではないため、その負担は軽減されます。
利用要件には、登記簿謄本などを活用しても所有者や共有者の情報が得られず、管理が必要な状態であることなどが含まれる点にも注意が必要です。

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所有者不明土地を購入するときに起こりうるリスク

所有者不明土地を購入するときに起こりうるリスク

所有者不明土地を購入するにあたって知っておくべきリスクについて解説します。

交渉が難航する可能性がある

そもそも所有者不明土地は、長期的に放置されている傾向にあるため、スムーズに所有者や共有者がみつかったとしても通常の売買取引のように話し合いがうまくいくとは限りません。
自分に所有権や共有権がある事実さえ知らない方も多いうえ、先祖代々引き継がれている土地であれば第三者に売るのはよくないと考える方もいるためです。
また、共有名義の土地に関しては共有者の一人が認知症や行方不明になっているなどの理由で、売りたくても売れない状況にある可能性も考えられます。
放置されている土地であっても、所有者や共有者が見つかれば必ずしも売ってもらえるとは限りません。
その点を理解し、交渉に臨みましょう。

所有者や共有者の揉め事に巻き込まれる可能性がある

共有名義の土地に関しては一定の割合の共有者が売却を認めれば土地を売れますが、あとからトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
法律面でみると、一定の共有持分以上の権限を持つ共有者から売却の許可を得られると売買取引ができますが、あとから所在不明の共有者がみつかる可能性も十分に考えられます。
共有者であれば売買代金の一部を受け取れるものの、知らぬ間に財産取引がおこなわれていたとなれば不満に感じる方も出てくるでしょう。
購入者に問題がなくても、あとから粘着されるようなリスクが伴うので、十分な話し合いが必要です。

コストが高くなる可能性がある

所有者不明土地は長期的に放置されている傾向にあるので、草木が生い茂っていたり倒壊寸前の空き家が残っていたりするとコストがかかります。
一見更地にみえても残置物があると、建物を建てたり駐車場などで利用したりするために整備する必要が高くなるので、金銭面のシミュレーションをしてどれほどの負担があるかを確認しましょう。
売買取引をしたあとにコストが高すぎて整備できないとなっては、購入する意味がありません。
専門家に依頼して土地の状態をみてもらい、そのままの状態で利用できるのか、整備が必要であればいくらかかるのかを確認してください。

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まとめ

所有者不明土地は、住所変更登記や相続登記が義務化されていなかったため日本国内に多く点在しており、管理が行き届かずに問題視されていました。
現在は法改正されて、不在者財産管理人制度を活用すれば以前よりも簡単に土地の売買ができる状態です。
ただし、売買取引が成立したあとにトラブルになる恐れもあるので、リスクを把握したうえで対策をとりながら土地取得を進めましょう。
そのためにも、専門家の助言を得ながら、法的手続きや条件を十分に確認したうえで取引を進めることが求められます。


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