地目が山林の土地を買うとどんなデメリットがある?メリットも併せて解説
山林を購入して住宅を建てる際には、価格の安さや広い敷地を確保できる点が魅力です。
しかし、造成工事やインフラ整備の負担が大きく、計画的な準備が求められます。
さらに、住宅ローンを利用するには地目変更が必要になるケースがあり、手続きの確認も重要です。
この記事では、山林を宅地に変更する必要性や、購入のメリット・デメリットについて解説します。
地目が山林の土地を購入するデメリット
地目が「山林」とされる土地は、豊かな自然や低価格が魅力ですが、住宅を建築する場合にはさまざまな注意点があります。
ここでは、主要なデメリットを解説します。
造成工事
山林の土地に住宅を建てるには、まず土地の平坦化や地盤の補強などを含む造成工事が必要です。
これは、安全性を確保するうえで欠かせない工程で、専門家の計画に基づいて重機を使った整地や擁壁の設置をおこなうことがあります。
費用は土地の傾斜や広さ、土質などによっては大きく変動し、急斜面では大規模な切り土や盛り土が必要となり、高額になりやすいです。
また、水道や電気、ガスなどのライフラインが未整備のことが多く、これらを引き込む工事がくわわると費用や工期がさらにかかります。
水道管は、配管距離が長くなるほどコストがかさみ、工事期間も長引くため、都市部に比べると負担が大きいです。
造成工事には、土地の地質を見極めた設計が欠かせないため、専門家と十分に協議して計画を進める必要があります。
災害に弱いリスク
山林の土地は、地形や地盤の特性から自然災害のリスクが高まる場合があります。
森林を伐採して住宅を建てると、土壌を保持していた植物が減少し、雨水や地下水の流れ方が変わることで土砂崩れや地滑りが起きやすくなることが指摘されています。
また、地震の際には傾斜地の揺れが増幅されて、建物に大きな負荷を与える可能性があります。
こうしたリスクを低減するには、地盤調査の結果を踏まえた補強策や排水工事、斜面の擁壁設置などを検討し、必要に応じて専門家のサポートを受けることが大切です。
自治体が公開しているハザードマップを活用し、災害リスクの高い区域を避けるなどの配慮も必要になります。
水道管が引き込まれていないことがある
都市部から離れた山林の土地は、水道管などのインフラが整っていないケースが多いです。
新たに水道管を引き込む場合は、専門業者による配管ルートの策定や自治体への許可申請が必要となり、手続きに時間がかかります。
水源から遠いほど施工が複雑化し、費用が大幅に増えることもあります。
環境保護の規制が厳しい地域では、自然環境に配慮した施工方法が求められるため、通常以上に工期やコストがかかる可能性があります。
水道管の新設費用は、自治体からの補助金制度がある場合もありますが、地域によって適用条件が異なるため事前調査が欠かせません。
また、トイレの排水には浄化槽を設置する必要がある場合も多く、その設置費用や維持管理費も考慮しておきましょう。
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地目が山林の土地を購入するメリット
地目が「山林」の土地には、デメリットだけでなく魅力的なメリットも存在します。
土地代や固定資産税が安い
山林の土地は、市街地から離れていることなどを理由に、宅地に比べて安価で購入できる傾向があります。
都市部で同じ広さの土地を用意する場合と比べて、大幅に費用を抑えられるのは大きなメリットです。
また、地目が山林の場合は評価額が低いため、固定資産税も比較的安くなる傾向があり、維持管理費用を抑えやすいメリットがあります。
購入後は、土地の現況が変わると評価額が見直される場合もあるため、自治体の制度を事前に確認しておきましょう。
ただし、実際の税額は自治体の評価基準によって異なるため、購入前の段階でしっかり確認しておくことが必要です。
地盤が固い
山林の中には、長期間にわたって自然の状態が保たれ、土壌が圧密されている地域があります。
そうした土地は地震などの自然災害に比較的強い場合があり、建物の耐久性を高めやすいというメリットがあります。
しかし、一概に山林だから固い地盤とは限らず、水辺や急傾斜地は軟弱地盤となる可能性もあるため、建築前には専門家による地質調査が不可欠です。
調査結果を基に適切な基礎工事や補強をおこなうことで、安全かつ長く住める住まいを実現できます。
地盤の状態を見極めることで、結果的に建築コストを抑えられる可能性もあります。
広大な土地
山林は広い面積を確保しやすいため、自然と調和した住環境を作りやすい特徴があります。
広い敷地を生かして庭や菜園を設け、アウトドア活動を楽しむなど、都市部では難しいスケールのプランが可能です。
また、親族や友人と共同購入し、それぞれの住宅を建ててコミュニティを形成する選択肢も考えられます。
自然環境の中で多様な活用方法を検討できるのは、山林ならではの魅力といえます。
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地目「山林」を買ってから「宅地」に変更する必要性
地目が「山林」の土地を住宅用地として活用する場合、地目変更が求められることがあります。
山林のままでは融資が受けられない
住宅ローンを利用する際、多くの金融機関は地目が「宅地」であることを前提に審査をおこないます。
地目が山林のままだと担保価値が低く見積もられ、融資審査が通りにくい場合があります。
市街化調整区域などの建築制限の厳しい地域に該当すると、建築自体が認められない可能性もあるため、さらに融資を受けにくくなる傾向があります。
そのため、住宅を建てる意図がある場合は、地目変更を早めに検討し、金融機関と相談しておくことが望ましいです。
地目変更登記
地目を「山林」から「宅地」に変更するためには、地目変更登記を法務局でおこなう必要があります。
まず、土地の現況や境界を正確に把握するために測量を実施し、土地家屋調査士に依頼して必要書類を作成します。
申請書には、地目変更を求める理由や測量図、現況図などを添付し、手数料の納付もおこないます。
受理されると審査がおこなわれ、問題がなければ正式に地目が「宅地」に変更されます。
ただし、手続き完了までに一定の期間がかかるため、建築スケジュールや融資手続きとの兼ね合いを考慮して進める必要があります。
自治体によっては、別途許可や届け出が必要になる場合があるので、あらかじめ情報収集をしておきましょう。
地目の変更と同時並行で家を建てる
地目変更登記と住宅建築を同時並行で進めることで、全体のスケジュールを効率化できるケースがあります。
たとえば、造成工事と登記手続きを同時期におこない、地目変更が認められた段階で建築確認申請をおこなう方法です。
ただし、建築確認申請には地目が「宅地」であることが条件となるため、変更登記の進捗状況を随時確認しながら進めることが大切です。
各手続きには、専門的な知識が必要となるため、土地家屋調査士や建築士、行政書士などの専門家と連携し、計画的に作業をおこなうことが望ましいでしょう。
同時進行で作業を進める場合は、こまめな打ち合わせや情報共有を心がけ、手続きの遅れを最小限に抑えることがポイントです。
地目変更後は、固定資産税の区分も変わるため、新たな税負担を踏まえた資金計画を立てておくと安心です。
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まとめ
地目が山林の土地は、広い敷地を低価格で購入できるメリットがある一方、造成工事や水道設備の設置が必要になるデメリットもあります。
住宅ローンの融資を受けるためには、宅地への地目変更が求められることが多く、事前の確認が不可欠です。
山林の土地を活用する際は、メリットとデメリットを把握し、計画的に進めることが重要です。